正社員と非正規労働者の待遇格差をめぐる訴訟で最高裁が10月、
結論が異なる2つの判断を示しました。
13日の判決では非正規側に退職金・賞与(ボーナス)の支給を認めませんでしたが、
15日の判決では5つの手当・休暇を認めました。
専門家からは「企業の実情に踏み込んだ判決」「整合性のある判断」との評価の一方、
事業者側に対し、業務と待遇の関係を精査した上で労働者ときめ細かく対話すべきだとの声も上がっています。
個人的には同一労働同一賃金の観点から
どちらも訴訟側の勝訴になるのではないかと思っていましたが、
今回の結果にはとても納得しました。
線引きが難しく非常に判断が難しいのではないでしょうか。
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年末年始勤務手当は「忙しい時期に働いた対価」、
夏期・冬期休暇は「心身の回復を図るため」といったように、
手当や休暇は支給趣旨がシンプルだと思います。
これに対し、賞与や退職金は基本給に連動している上、
支給趣旨も年功や職種、実績といったさまざまな要素で構成されており、
「まさに企業の人事裁量の話。司法として踏み込むのはおかしいと判断した」と思っています。
ただ、判決では賞与・退職金の不支給が
「不合理となることもありうる」とも言及しています。
正社員も非正規も人事異動がなく、ほとんど同じ仕事内容であれば、
非正規に賞与などを支払わないのは不合理だと判断される可能性はあるのではないかと思っています。
特に事業所が1つしかないような中小企業の場合は、気をつけるべきだと思います。
正社員と非正規の不合理な待遇格差を禁じる「同一労働同一賃金」のルールは、
大企業は今年4月から始まり、中小企業でも来年4月から適用されます。
責任の程度や人事異動の範囲などが異なる場合は、一定の格差が認められますが、
企業は労働者側から求めがあれば、待遇差について説明しなければなりません。
今回の判決を機に、企業側は賞与や手当などについて、
業務の実態とズレがないか整理しないといけません。
この手当が何のためにあるのか、適用対象は誰なのか、
説明できるだけの準備をした上で、メリットとデメリットをバランスよく提示しながら、
労働者側と話し合うことがとても重要です。
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